日光東照宮には「見ざる、言わざる、聞かざる」という「三猿」があります

「見ざる、聞かざる、言わざる」とはよく聞く表現です。
良からぬものを見ない事、聞かない事、言わない事は非常に容易いが、それを「思わざること」は至難の業であるという解釈が有名です
人とは感情の生き物でありますから、それは確かに難しい事です

もっと鳥瞰（ちょうかん）して思えば、たとえばネガティブな思いであっても、それが意識に備わっている以上「必要だから」備わっている訳で、ネガティブな感情を通して、ポジティブな結果に結びついた例など、星の数以上に存在する事でしょう。
つまり「見ざる、聞かざる、言わざる」の一般的な解釈は確かに正しきものと思われながら、実は理想的な解釈であるとは言えないのです。

「見ざる、聞かざる、言わざる」の本源的な意味とはこうです。

人はみな、ある程度の年齢にも達すれば、自らをいっぱしの人物であると誇りたくなるものです。
しかし、誇っているうちはまだ未熟であり、自らがいかに社会から必要とされているかを知覚したとしても、そんな自己を省み、俯瞰し、常に謙虚に、自らのいまだ無知を痛感せよという事です。

良からぬことを見ないこと、聞かないこと、言わないこと、と言いますが、、、

実は私たちがまことに謙虚となるならば、果たしてそれが「良からぬもの」かどうなのか、判断できる境地になどとても至っていない事が直観されます。
つまり、それが「良からぬもの」だと断罪する自己こそが傲慢の極みであることを告げているのです。
またそれは「善と悪」という弥生的穢れ思想を思考の源泉に置いている。
己の未熟さを浮き彫りにしているのです。

「見ざる、聞かざる、言わざる」の根幹とは「あなたはまだ何も見ていないし、あなたはまだ何も聞いていないし、あなたはまだ何も言っていない」という衝撃的な事実をついてきているのでした。
この心理の中心核にあるものとは「己はまだおよそ未完成であるのだから常に謙虚でありなさい」という教訓です。
自らの無知を自覚し、全能感に陥れることなかれということです。

それは己の意識を常に「無」にしておきなさいよ、という先人の教えだったのです。
「無」としてこの世を生を受け、年齢とともに人はあらゆるものを身に纏（まと）っていきます。
しかし、ここでは逆の事を告げているのです。

年齢を重ねて知識や経験を身に纏いながらも、意識だけは赤子のごとき「無」のままでありつづけなさいよということです。
三次元的な「所有」を誇るのではなく「無」こそが最大の宝物であるという実にシンプルだが難しいことを、私たちに教えてくれている訳ですね。
これは究極の真理であり、同時に究極のの「アンチエイジング」でもあるわけです。

日本で起こることは世界で起こる。
世界で起きることは日本でも起きる。

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